映画化されるって噂があった頃は見に行く気にはならなかったんですよ。
最初はベン・ウィショーさんがオファーされていて、彼のファンだからそっち方面から情報が来て。
彼ならうまく演じるだろうけど、フレディ・マーキュリーはフレディ・マーキュリーでしかないし、どんな作品になるにしても本物のパフォーマンスには勝てないだろうしな、とか思って他人事のように感じていたのですよ。
Queenのファンになったのは20年位まえでもちろんフレディの死後で、うちのお婿さんは存命中からのファンで亡くなったときのテンションの落ち方がひどかったような…覚えがある。私はイギリスのロックをよく聴いていたけれど、Queenのことは本当によく知らなかったのよね。アルバムジャケットが苦手だったりして敬遠していたところがあったり。吉良吉影のほうが先だったり。
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そもそもファンになったきっかけが追悼ライヴのジョージ・マイケルの歌う「Somebody to Love」なので、フレディ歌ってねーじゃん!という邪道ぶり。しかしあれはベストアクトだと思うよ。ジョージ・マイケルの華麗なる歌唱力に圧倒される。本家ももちろんいいんだけど。
それはどうあれ、同じく見る気がなかったろくちゃんが評判を聞きつけて、プロモーションを見たりしてやっぱり往年のファンなのでうずうずするんですよ。
気がついたらWe Will Rock Youのリズムを指先で叩いていたりするんですよ。
で、我慢できなくなって出不精で人混み嫌いな私に週末に行くぞと誘うわけですよ。私もまあまあ見たくなっていたところだったので良いですよ、と応じるわけですよ。
一人で観に行けばいい話なんですけど、ろくちゃんは映画を見たあとにあーだこーだとネタバレ全開で私に伝えたいから一緒に見に行きたいわけですよ。かわいいかよ。
で、人が多いのに私ったらマスクするのを忘れて劇場に行ったんですが。
冒頭からどっばーと涙が。それこそSomebody to Loveがかかるじゃないですか。
で、後ろ姿がフレディより小ぶりなんだけどオーラは感じるじゃないですか。
ラミ・マレックのフレディはフレディの前歯を誇張しながらも、自信たっぷりの笑顔や孤独なときの小動物みたいな眼差し、なにかに取り憑かれたような同性の人を見る目線などすごく上手だったとおもいます。本人に寄せる努力をしたというパフォーマンスも見事でした。
つぶやいたけど、私、そんなにフレディの前歯が出ているって印象なかったのよね。日本人で見慣れているからな。初っ端から歯が出ている話をされていていろいろ言われているのを見ていると「日本には明石家さんまさんという偉大なコメディアンが居てだね」とフレディのかわいい歯をいろいろ言うマスコミ関係者相手に言いたくなりましたね。
どこまで事実に沿っているかとかは知らないけど、フレディが亡くなった時期は知っているのでライヴ・エイドの時点でもう自分は知っていたのかと思うと切なくて、ライヴ・エイドで歌われていた曲、私はだいたい全部歌えるので隣のお婿と一緒に歌っていましたよ…
途中、何度も仲間ともめてもQueenの印象的なリズムを思いつくというきっかけで曲作りの方へ入っていくシーンが好きでした。フレディがわりと無軌道で無茶をやるなかで他のメンバーは大人の対応をするんですね。そしてブライアン・メイが似ていて、ロジャーの女装が超可愛くて(ロジャーの人、X-MENに出ている人だし)よく見つけてきたなと感激したり。フレディのセクシュアリティがどうであれそこをスルーしていた向きがあるのも大人だなあ。
で、セクシュアリティの表現なんですけど、旧世紀の話だからゲイがあからさまにゲイで、あんまり旧世紀のゲイに対して知識がないけどヴィレッジ・ピープルやん!って思いながらそれっぽいシーンがいくつかあって、私は頭の中にお花が咲きそうだったのですが、観客には世代と言いましょうか、私より年上の人が多かったのでこれはどうなんだろうと思っていたら、見終わったあとに左隣のお姉さまは「すごく、よかった!」とお連れさんに仰っていたからとりあえず大丈夫だったらしい。
レビューをいろいろ見たらあのへんのことをぎゃあぎゃあ言うてる偏見丸出しの人もいるじゃあないですか。
いや、フレディなんだからそのへんをぼかしたら炎上だよ(実際そのへんをぼかした最初のプロモーションのせいで炎上したらしい)何言ってるんだよガチに決まってるじゃん、濃厚なセックスシーンがなかっただけ君らに優しいよ!って思ったものだけど。
偏見持っている人がなんで見ちゃったの?って首を傾げたり。つーか、偏見があると素敵な作品を楽しむ幅が狭まるよね。つまんない。
フレディがエイズで亡くなってしまったのは、エイズに罹患するのが早すぎた(いまの時代は、発症しなかったら長生きできる可能性も高いし普通に生活もできる)のが惜しい、って印象。あの頃はゲイ=エイズにかかるという偏見も強かったんだけど、そこには有名人であるフレディが亡くなってしまったことの影響も大きかったような覚えがある。
そのあたりにやりきれなさを感じながらも本気のパフォーマンスを見せてくれたのだなとわかるライヴ・エイドでそりゃあ泣くわと。MTVなどであのパフォーマンスを何度か見ていたけれど、事情がわかると胸が熱くなるなと。ライヴ・エイド自体は私は小学生だったのだけど、うちのおかーさんが好きなミュージシャンたちがどえらく立派なことをやってるというのは当時わかってました。うちのおかーさん、ボブ・ディランもデヴィッド・ボウイも大好きで。MTVも地元で夜中にちょいちょいやっていたのをビデオに録って私に見せてくれていたので、同世代の中では見るのが早い方だったと思います。当時、都会に居たろくちゃんはもっと見ていたそうだけど。
リアルタイムではあんまり知らなかったけど(有名な曲はそりゃあ聴いたことはあったが)それが悔しくなるような素敵な作品でした。
フレディの猫好きなとこ、寂しそうにしているところを見てるとお家に連れて帰ってお話をしたいような気にさせられたなあ。
モンティ・パイソンもそうだけど、だいたい高学歴メンバーで構成されたグループって面白いなあと、そのへんの側面も気になって見ていました。
で、ラスト、エンドロールでああやっぱり最高だな、ってフレディ好きだわと改めて思ったの。Don't Stop me nowからShow must go onへの流れ、「あの名曲出てないやん!」を潰してくる引用曲の使い方もよかった。
お婿も素直にボロッボロに泣いていました。もともと泣き虫さんなんですけど。そして行く前も帰ってからもずっとQueenを聴いています。
私は、諸事情でもうおおよそ一生会えない友達に「We are the champions」を歌って送ったことがあったんですが、あれはやってよかったなと、本人はうるせーなと思ったかもしれないけれどそう思ってます。誰かの心に寄り添ったり、鼓舞したり、センスオブワンダーだったりそういう曲を沢山くれたんだなあ。
まあ、でも私はボヘミアン・ラプソディーといえば気を抜くとハッチポッチステーションのいぬのおまわりさんを思い出しちゃうんですけどね…