なぜか正月の連休最終日(私はそれよりちょっと前に仕事始めしていたけれど)にTwitterで盛り上がったハッシュタグ 「今まで読んだ中で一番こわい短編小説」、見ていてとても有意義でした。
- 作者: アルジャーノン・ブラックウッド,ブルワー・リットン,ヘンリー・ジェイムズ,M・R・ジェイムズ,W・W・ジェイコブズ,アーサー・マッケン,E・F・ベンスン,W・F・ハーヴィー,J・S・レ・ファニュ,平井呈一
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2006/01/31
- メディア: 文庫
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なぜなら、私はホラー映画は苦手なのに怪奇小説は好きだから!
何冊かはレビューしている。私は上記のハッシュタグでこちらの「ゴースト・ハント」を挙げました。モキュメンタリーホラーの原点って感じだったような気がする。一番怖かった、って印象が強い。(気がするとか印象が強いとか、具体的には思い出せない感じの表現でいっぱいですがー)
で、今回面白かったのが、私の部屋(20畳くらいある)には3500冊くらいの本があるんですが、挙げられたタイトルのうち、持っているものを目にすると、どこにあるか脳が反応して首及び目が動くんですよ。自分では割と無意識なんですけど、お婿がそれに気づいて面白がって本探しをやってくれましてね。
そしてやたら怖い作品として挙げられがちのW.W.ジェイコブズ「猿の手」。このタイトルを見たときには私はテレビの横、南側の窓際に並んでいる本棚に目を走らせました。
怪奇小説傑作集があった場所 pic.twitter.com/Asrz0DQeHw
— 坂田 (@leyla_gamer55) 2019年1月7日
そしてお婿が見つけたのが上に挙げた「怪奇小説傑作集1」だったのですが…
これ、持っているの知らなかったのよね。
じゃあなんであそこに「猿の手」が収録された本があるとわかっていたのか?
たぶんこの下の段に、「贈る物語 TERROR」があったんじゃないかなと。
贈る物語 Terror みんな怖い話が大好き (光文社文庫)
- 作者: 宮部みゆき
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2006/12/07
- メディア: 文庫
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私が持っているのは単行本の方。
いや、これに関しては別のところにあるような気がする。
東側の窓際に並んでいる本棚に…
それが正しかったら、私の内なる記憶、必要な本がだいたいどこにあるかわかる感じは自分の思い込みとか曖昧な記憶を無視してもはや本能で認識しているってことになるのかもね。
で、みなさんが怖い怖いと挙げている「猿の手」ですが。
私はそんなに怖いと思わなかったんだよね、何回か読んだはずなんだけど…
そもそもどんな話だっけ、と、お婿と話をしていて「なんか願い事が3つ叶う話」というのはお互いにうっすら覚えているけれど具体的に思い出せないので、じゃあ改めて読もうと。
ホラー映画は子供の頃にホラー映画好きの母親に無理やり見せられて超苦手なのに、怖いお話と「あなたの知らない世界」とスティーヴン・キングは別腹だから、そこに面白い怪奇小説があると聞けばとっとと買っちゃうところがあり。
で、上記のハッシュタグで気になったものを買いました。
- 作者: シンシア・アスキス他,倉阪鬼一郎,南條竹則,西崎憲
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2006/08/30
- メディア: 文庫
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西崎憲先生なくして語れないよなー。怪奇小説、奇想、奇譚関連はね。
怖くはないけどジェラルド・カーシュの作品とか、A.E.コッパードの作品を翻訳してくださって本当にありがとうございます…
まあ、今回読んだ「怪奇小説傑作集1」は西崎憲先生はおそらくノータッチだけど。
平井呈一さん(吸血鬼ドラキュラを翻訳してくれた、怪奇幻想小説の翻訳の草分け的な存在)の翻訳だけど。
編まれた作品も1800年台から1900年代初頭に発表された作品ばかりだし、この小説集も初版は1969年だからね、翻訳の文章も時代がかっている感じがしました。台詞回しとかね。あと海外が舞台の作品で「田圃」とは。
小麦畑かな?
読んだものから感想を書いていこう。
W.W.ジェイコブズ「猿の手」
確かに願い事が3つ叶う猿の手が重要なものとして出てきます。
この作品ってどこを怖がるかで趣が変わるが、怖がる部分が違うことで色んな部分を怖がることができるとんでもなさがある。読書会向き。
以下、ネタバレ。
死んだ息子が帰ってくるかと思ったら帰ってこなかったという部分では、スティーヴン・キングの「ペット・セマタリー」がキング的に「そうやないやろ!」とアンサーを出した作品かな、と思ったんだけど、帰ってこなかったら帰ってこなかったで、息子が死んだのが偶然なのか、それとも猿の手のせいなのかがわからなくてこわい。
息子が死んだときの息子の会社が賠償金(にしては安い?)を持ってきたくだりが、必然性を演出しているのが怖い。
魔術なのか、偶然なのか。
残されたのが老夫婦という寂寥感が救いの無さを感じてしまう、もともとの浅はかでやや高慢な気質を思うとさらに悲しさがある。
こりゃあ名作だわ、そういう趣の作品ではないのに夜トイレに行くのが怖くなってお婿についてきてもらうわと満足感を味わいました。
やっぱり怖いっていうより、絶望感が強い。
一日後。
お婿とこの話をしていたらなんだか齟齬があったので自分が重要なところを読み逃している疑惑が発覚。
ウィキペディアで調べたら、老夫婦のうちのお父さんのほうが3つ目のお祈りをしていた。私、そこを見落として「3つ祈れるのに2つだけで、しかも開けたらアレだったのはなんだかなあ」と思っていたんだけど、祈っていたらしい。で、ウィキペディアではなにを祈ったか書かれていたけれど、私が読んだ本文の方はそこは明確に書かれておらず、今どきで言うところの「おわかりいただけただろうか」程度の匂わせだった。
そらー余計こわいわ。
なんで重要なところを読み飛ばすかなあ…でもよかった。
しかし、こういうことを考えても仕方がないんだけど、世界中の誰もが幸せになれる世界を願ったら猿の手はどう叶えようとするんだろうな?くだらない私欲を満たそうとするから見返りが悲惨だったのだけど、曇りなき眼を持つアシタカくらいの人がなにかを祈ったらどうなっただろう?
そういう人には渡らないブツなんだろうな…