学生の頃に国文学を専攻していて無理やり中島敦の論文を書かされたこともあった…
短いお話だかららくしょーらくしょーとか思っていたら、なにこれ日本語?古文でもないよね?とわかんねえ、読めねえ、私は夏目漱石先生の勉強がしたくて国文学を専攻したけどあの人のはめっちゃ読めるのにそれより後に生まれたこの人のこの文なに?読めない!と恐れおののいて幾年月…当時の論文、なに書いたかさっぱり思い出せない。一生懸命文献を紐解いた覚えはある…もちろん卒論は夏目漱石先生でした。
高校が進学校で文系だと漢文も強化する授業が組まれるので私は漢文もある程度読めるけれど、この作品は漢文の知識も必要で、読めたくらいではもう、わからん!
それから時間が経って、以前漫画で「文豪ストレイドッグス」を読んだときに主役が中島敦で彼の特殊能力で虎が出るのを見て、山月記だなあと思って。
このお漫画自体は国文学が好きだったらツッコミどころだらけで、楽しむより疲れちゃうので(一連の文豪のもともと人間だけど擬人化するやつも含め)苦手でアニメも見ていない。でも織田作気になるから見ようかな♪くらいのこだわりなんでチャラい。
ケン・リュウのファンタジー武侠小説「蒲公英王朝記」の訳文の文体は中島敦に近づけたいという感じのことを翻訳者の古沢先生が仰られていてあれを意識して翻訳できるってすごいなーと思いつつ、漢字検定の問題にもちょいちょい出てくるのを読んでいるとそろそろ私、ちゃんと読めるんじゃない?と思って読んでみた。
詩人として名を成したい李徴が役人を辞めたものの大成出来ず、家族を養うために現役復帰したが自分より若い上司の下で働く屈辱の日々、出張先で発狂して帰ってこなくなった。一方、李徴の同期で役人でも上役になっていた袁傪(これGoogle IMEで反映されるんだよすごいね)は人食い虎の出る道を部下が大勢いるし大丈夫であろうと部下を従えて進んでいると虎と出くわし、あわやと思ったところで虎が身を引いて人語を話す、よく聞いてみると虎こそが李徴であった。
このお話、読み解くのは意外に簡単。自分でどうして虎になったのか、虎とはなにかを語ってくれるから、こちらで行間を読まなくても大丈夫なのだ。文章こそ難しいが、李徴という詩才に恵まれたが大成はしなかった男の心の葛藤がわかりやすく描かれていて、ひと歳とって読むと才能とプライドと現実の壁に対する苦しみという誰でも感じてくることについて書かれているのが身につまされる。いま読んでおいてよかった…というか、転職する人は就活前に読んでおくといいよ、謙虚になれるし自意識がおとなしくなる。虎を知り、うさぎになる感じ。いいね!
漢字検定準一級を取得すると読めるようになるもので、しかし一級並の漢字や語句も出てきたのでこれからも研鑽が必要。自分の力試しにもなるので中島敦は他も読んでいこう…本当、面白かった。そりゃああの頃の自分の担当教授がガチで勧めてくるはずだわ、応えられなくてゴメンネ!
読むのはたしかに難しいから、一語一語解説しながら読めなくて投げ出す人に教えたい。進学校の現代国語なら教えてくれるかな、私が習った教科書にはなかったけど。辞書を引きながらでも読んだらいい。
やはりある程度昔の日本文学はいいなあ、語彙も増えたぞ。内容の明暗どうあれ、良い作品を知ると幸せになれるね。
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↑中島敦よりは全然平易で面白いよ!