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夜は終わらない

複雑に入り組んだ現代社会とは没交渉

マイケル・オンダーチェ 「名もなき人たちのテーブル」

名もなき人たちのテーブル

名もなき人たちのテーブル

わたしたちみんな、おとなになるまえに、おとなになったの――。 11歳の少年の、故国からイギリスへの3週間の船旅。それは彼らの人生を、大きく変えるものだった。仲間たちや個性豊かな同船客との交わり、従姉への淡い恋心、そして波瀾に満ちた航海の終わりを不穏に彩る謎の事件。 映画『イングリッシュ・ペイシェント』原作作家が描き出す、せつなくも美しい冒険譚。

虚実が混ざったような子供視点のお話。主人公のモデルが作者っぽいが、あくまでフィクションだと云い通す。まあ、実話というと問題があるであろう。

吉野朔実中勘助の「銀の匙」を「よく見える眼鏡で世界を見ているよう」と言ったような表現をしたけれど、こちらの作品もあそこまでセンシティヴではないにしてもそんな感じ。 瑞々しい視点で子供らしいやんちゃをしながらも大人に囲まれ、望む望まざる関係なく自覚の有無もあやふやなまま大人の世界にも介入していく。 驚いたのが、子供の主人公を周りの大人が尊重して一部の人たち以外は主人公を傷つけないこと。 私は子供が傷つく作品が超苦手なので普段は子供が主人公の作品は敬遠しているのだけどそこは安心だった。 大人になって思い返すことで子供の頃にはわからなかったことが理解できるのはままあることで、この作品もその構成もあり、単なる子供の頃の美しい思い出話ではなくしていた。

船で長旅というと今では贅沢旅行か大荷物を運ぶタンカーなど商用のイメージだけど50年前はこれが普通だった。日本の子供の親戚同士や近所の子供が同じ時期に海外へ生活のために渡航したり、数十年後に地球の反対側くらいの場所に暮らし、ていたりするだろうか。いまの方が可能性が広がっているようで、昔の方が他に道がない分遠くへも行けたのかもしれない。 周りを取り囲む大人がユニークなんだけど、特に鳩を2ダース同乗させているミス・ラスケティが特別に気に入りました。

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