夜は終わらない

複雑に入り組んだ現代社会とは没交渉

ケン・リュウ 「蒲公英王朝記 巻ノ一 諸王の誉れ」

 

SFファンタジー短編集 「紙の動物園」がヒットしたケン・リュウの毛色の違う武侠ファンタジー長編シリーズ。

翻訳者の古沢嘉通先生が去年の夏に行った「双生児」のツイッターキャンペーンの抽選で当選してこちらをご恵贈賜りました。そもそも「双生児」もご恵贈賜ったという経緯もあり、感謝しても感謝しきれない。

 

 七つの国々からなるダラ諸島では、統一戦争に勝利したザナ国が他の六カ国を支配し、皇帝マビデレが圧政を敷いていた。喧嘩っ早いが陽気で誰からも愛される青年クニ・ガルは、日々気楽な暮らしを送りながらも、何か大きなことを成したいと夢見ていた。いっぽう皇帝に一族を殺され、過酷な運命をたどってきた青年マタ・ジンドゥは、皇帝を手にかけるその日のため研鑚を積んでいた。行く手に待ち受ける数多くの陰謀と困難を乗り越え、ふたりはともに帝国の打倒を目指す。権謀術数渦巻く国家と時代の流れに翻弄される人々を優しくも怜悧な視点で描き出す、ケン・リュウの幻想武侠巨篇、開幕。

項羽と劉邦」を下敷きにしているけれど飛空艇あり、神ありでファンタジーの趣が強い。

私は「項羽と劉邦」をあまり知らないので(ちょっと前まで三国志の人たちだと思っていた…)その辺の考察は抜きで、肩の力を抜いた読者として書くのだけど、歴史が動く瞬間に神がそれを見ていたりちょっかいをかけていく感じはワーグナーのオペラのようだと感じた。荘厳さはそんなにないのだけど。

座り方、文字、文化などこまごまとした設定がしっかりしていて、設定の細やかさにハマれる人はそこに注目してもいいかも。美しい地域の表現は際立っていた。そういうところの細やかさは短編集でも感じていたのだけど、設定バカにはうれしいのよね。

主人公は個性が全く違う二人の男性だけど、彼らのいないところでも歴史が動き、様々な行いをする。寓意を感じる部分もあれば、心温まる部分もあり。

主役で貴族出身のマタ・ジンドゥが某世紀末覇者拳王っぽく、黒王号も手に入れるくだりがあるのでそこも注目。

お話の流れ、権力を持った人の身の処し方などは現代にも通じるところがあり、こうなってはいけない見本みたいなのも多々あって社会の中にいるものとしては苦い気分になることも。

元は倍のボリュームで三部作の1作になるらしく、日本版はあえて分冊にして残り半分がもうすぐ発売。まだ序盤、これから派手になるという触れ込みのようなので、キャラクターを忘れないうちに続きも読もうと思っております。

 

女の人はあまり出ないけれど出たら出たで個性的。みんな魅力的だけど好きだし幸せでいてほしいのはジアだな。

特筆すべきはおいしそうな料理がちょいちょい出てくるところ。

おいしそうな料理が出てくるお話は正義なので!みんな読むといいよ! 

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