夜は終わらない

複雑に入り組んだ現代社会とは没交渉

トム・マクナブ「遙かなるセントラルパーク(上・下)」

遥かなるセントラルパーク 上 (文春文庫)

遥かなるセントラルパーク 上 (文春文庫)

遥かなるセントラルパーク 下 (文春文庫)

遥かなるセントラルパーク 下 (文春文庫)

TLBookclubというツイッター上での読書会コミュニティで月1作のお題の本を読むという取り組みに参加しております。
第1回、2015年1月のお題が「遙かなるセントラルパーク」で、お題が決まる前にすでに買っておいたので参加表明も早かったものの、相変わらず読むのが遅い私で読了は2月3日。

ロサンジェルスからニューヨークまで5000キロ。アメリカ大陸横断ウルトラマラソンがはじまる。イギリス貴族、人生の逆転を狙う労働者、貧しい村のために走るメキシコ人、ガッツを秘めた美しき踊り子…2000人のランナーが、誇りをかけてセントラルパークめざして走りはじめる!圧倒的な感動と興奮の徹夜本、堂々の開幕。


読む前にジョジョの奇妙な冒険好きのわたしは「スティール・ボール・ラン」を思い出したのだけどこれは馬には乗りません。
帯には「マラソンするだけの小説なのに徹夜するほど面白い」とあるけれど、確かにマラソンをする、させるだけの物語なのだけどことが3ヶ月に及び、参加者が最初は2000人いると様々な事情や困難があるわけで、それだけでかいとなると思っても見ないところから妨害も入るわけで。
でもそこを助けるのが大体を持って人情、スポーツを愛する熱さというのに惚れ込んでしまう。

スティーヴン・スティールっぽいイメージを持ってしまう興行主のフラナガンは儲けについてかんがえながらも人として大事な部分を失っていないので自分たちを儲けさせてくれる走者たちを搾取しようとは思わない、実に人間味があるキャラクターで、この作品で一番愛されて読者からも評判が高いドク・コールもよいけれどフラナガンの人物造形にかなり好意を持ってしまった。


作者がもともとその道の人なので走者たちの描写、ウルトラマラソンの細々した構成も念入りにできていてやけにリアルなのもよく、時代が1930年代なのだけど、J・エドガーフーヴァーフーヴァー大統領、アル・カポネまで登場して話がよりスリリングになっていて、知らなくてもいいかもしれないけど彼らがどんな人物だったか知るとより面白い。特にJ・エドガーフーヴァー

個性豊かで訳ありの事情がからむ走者たちも魅力的で彼らもただ走っているだけではなく、セントラルパークに向かうまでの様々な困難に対峙する。そのスリルったら、走るだけでも大変なのに、ようやるわと思ってしまう域。随行するジャーナリストたちも徐々に一体になっていく過程が無理なく、読者も含めチームになっていける。

ラストで泣けるかどうかはさておき(そう言われると泣けないよねえ)、熱いお話を読めて満足。
ドク・コールのチッカモーガ推しがその当時ならではの名士で仙人のような人なのにそういう香具師みたいなところがある感じ、随行するのが見世物などのサーカスというのもよい味付けでした。面白かった。