夜は終わらない

複雑に入り組んだ現代社会とは没交渉

バーバラ・ヴァイン 「長い夜の果てに」

長い夜の果てに (扶桑社ミステリー)

長い夜の果てに (扶桑社ミステリー)

http://www.amazon.de/No-Night-Too-Long-OmU/dp/B004KVBXP6/ref=sr_1_1?s=dvd&ie=UTF8&qid=1348071820&sr=1-1
上記のリンクにあるBBCのドラマで私がその容姿に惚れ込んでいるLee Williams氏が主演されているので、見たくて見たくてとりあえずYouTubeでトレイラーとかを見て悲鳴に近い嬌声をあげて同居人にどん引かれていて、でもドイツからDVD(しかもゲイミステリ)を取り寄せるのは非常に勇気がいるからとりあえず、とりあえず原作を読もうと思い至った。

元来、私はそんなに腐女子ではない。付き合いでたしなむ程度。その割には濃いものも漫画とかで読んでいるけど、もともとピンとこないのか、何度も同じものを楽しむことはない。そして明るくて軽いものを望むきらいがある。

Lee Williams氏にもゲイの噂があるけどそれは個人の趣味で別にどうだっていい。でもできるなら男女のカップルで夢を見たいごくストレートなのであった。だから、よほど好奇心がそそられないとゲイミステリという分野はそれほど食指が動かない。


さてそういう私の心模様はさておき、このお話は創作をわざわざ修士課程まで進んで勉強した美貌の青年が、大学院を卒業して故郷のイギリスの海辺の街で事務仕事をしながら自分の罪を文章で振り返るという内容。
2年前になにかしでかしたらしい、というのは最初の頃からわかるのだけど、それがなんなのか、誰をどうするのか、文章を書き続ける彼に届けられる脅迫状めいた手紙は誰が書き、なにを伝えようとしているのか、秘密を徐々に明かしながら読者の興味を絶え間なく引き続ける構成力がすごい。文庫本で500ページを超えるボリュームなのにダレることなく、主人公ティムの自分勝手で手癖もよろしくなく、でもなんかゆるせるでしょ?みたいな話が続く。情景は彼の心と同じく曇って荒れていて湿っぽい。でもイギリスの海辺だから(途中からカナダとアラスカになるけど)いいでしょ?と思わされる。
主人公は人間的にはダメな部類入ると思うのだけど、周りの分別と教養があるいい大人が籠絡されるほどの美貌があり、ダメな部分をどうにかしたくなる雰囲気があるのは彼が語りなのにわかってしまう。結局彼が愚かなばかりにいろいろなものがかけ違ってしまっているのだけど、なに、この「でもゆるせるでしょ?」って感じ。
感想をいうなら、ものすっごく面白かった。ゲイのドロドロ感の凄まじさは、そういうものが大好物ならうってつけでしょう。私は怖かったけど。
お話に潜むある謎はわりと早い段階で気づいた。気づかないのは主人公くらいかもよ。


これを読んだあとでBBCドラマ版のトレイラーや、主人公にフィーチャーしたまとめの映像を見ると、セリフとかないのに憂いを帯びたティムの表情が魅力的でとてもよい。あんなに愚かな青年なのに、しょうがないなあ、もう!って思ってしまう。美しさは罪なのであった。しかしゲイの生々しい営みはやっぱり苦手なのでDVDの購入には至らない…だろうな?

ここからネタバレ。


ティムがロバート・レッドフォードの若い頃に似ているという表現を読んで「じゃあブラピじゃん!」と思わずつっこんだ。
じゃあ甘ったれた笑顔なのだ。で、最初の年にイヴォーが一人でアラスカに行くというくだりで膨れたり拗ねたりしたのかと思うと可笑しい。顔立ちの描写はいらなかった。私に任せて欲しかった。なんだろう、この砂を噛むような気持ち。別にブラピを否定する気はないけれど。
自分で一目惚れしたイヴォーをその気にさせて「愛しているよ」と言われた途端に冷めるという狩人ぶりを見せて、ドロドロの最後あたりなど目も当てられないほどの疎みっぷり。
そして疎まれたイヴォーの運命。
イヴォーが自分が捨てられるとわかった時点から起こるドロドロの諍いは背筋が凍る。ティムによってイヴォーが殺されるというのが前持って知らされているからいつ手を下されるのか、どんなひどい目に遭うのかハラハラしてしまう。結果的にティムが殺したと勘違いしただけで、その勘違いが2年も続くとかおバカな顛末。なのにイヴォーの運命は変わらないのだからひどい。

イザベルとイヴォーが兄妹なのはイザベルが出た時点で「そうかな?」と思ったのだけどそんなご都合主義があってたまるかと思ったらご都合と偶然だった。重病の友達の存在はアリなのかなしなのか。でも彼女が友達のことで動揺していなかったらかけ違いはなかったのか。
たぶんもともとイザベルがどストライクなのに双子のお兄さんに先に出会ったから性的にわりと縛られない気がするティムが勘違いして落としちゃって、イザベルにであって兄妹関係を知らなくても好きになってしまう運命だったのか、イヴォーが好みだけどやっぱり女性にこしたことはないってことか。面白かったのが、自分を鏡で写して「ゲイっぽいか否か」を確認するシーン。
読み終わったあとでは「いや、あなたもう知られているんだよ!」と笑ってしまう。
読み方しだいでは滑稽なお話でもあるんだけど最後などは特に、誰に感情移入して読むかで気持ちが変わりそう。
私はイヴォーがかわいそうでかわいそうで。一番大人でひどい目にあって。
ハッピーエンドじゃないでしょ、これえ!といろいろなものを抱えつつ、結局「面白かったなあ」と溜息をついたのでした。
これは語り継がれるべきゲイミステリだと思う。

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