夜は終わらない

複雑に入り組んだ現代社会とは没交渉

シャンナ・スウェンドソン 赤い靴の誘惑 (株)魔法製作所

赤い靴の誘惑―(株)魔法製作所 (創元推理文庫)

赤い靴の誘惑―(株)魔法製作所 (創元推理文庫)

シリーズ2作め。
前作で稀有な特質を見込まれて(株)MSIに引きぬかれたケイティは、気になるMr.ライトがいるもののブラインドデートと会社のトラブルがきっかけで同じ特質を持つイーサンという弁護士のボーイフレンドもできて漸くハッピーな日々が訪れるかという時に、Mr.ライト、オーウェンがスパイの内偵の被害に遭ってスパイ探しを会社から命じられたり、テキサスから両親が訪ねてきたりと忙しくなる上に思っても見なかったトラブルに遭う、という展開。

前回でつまらない負け方をした、黒魔術側のイドリスが漸くおバカな本領を発揮。ADD(注意欠陥障害)なので集中力がなく、面白そうなものにすぐ目移りするその特徴が見事に現れているので不愉快で油断はできないながらも大したことない扱いをされている。派手好きでしょーもない嫌がらせが得意で不愉快なんだけどおもしろい人。

オーウェンが脈なしに見えるのでいままで数々の男性から妹扱いされて不遇の非モテ期を過ごし、手っ取り早く恋人が欲しかったケイティはイーサンになびいちゃうけど物語の神じゃなくても「それはないんじゃない?」って大きく罰を当てるんだけどそれにしてもその時のイーサンの振る舞いは女性からしてみればほとんど全員からブーイングを食らうものだった。あれはひどい。
ケイティは等身大の欲望ある女性なのでイーサンにも挑発的な行動をとったりするけど、結果が結果なので哀れを誘うだけだった。こんな気の毒な語り手がいていいのかと思うほど。

でもなんだかんだとオーウェンから素敵な頼まれごとをされたり免疫者と魔法使いで外敵から身を守るには相性がいいという理由で毎朝迎えに来てもらったり(帰りは別々が多いんだから迎えに来る理由が大して云うほど意味は無いって気づきなさいよ)ディナーをごちそうしてもらったり、他にボーイフレンドがいる時点でもオーウェンとは仲良しなんだからズルいわね。そりゃあ物語の神様にひどい目に遭わされるわ。

読みどころでは、ロッドの魔術をまともに食らったケイティが理性と戦う語り。肉食女子と理性が猛烈に揺らいで可笑しい。

そこから先は読んでいただいて萌えるなり苛立つなり悶絶するなりしていただくとして、ここからネタバレ。


ラストで二人が晴れて恋人同士になるだけに、お話の終盤まで甘い展開はほとんどないけど、靴のせいでオーウェンのおうちに泊めてもらえるところからのくだりは素敵な展開。
オーウェンはド近眼だからうちではメガネを愛用する、それ大事。大事ですから。
可愛い猫を飼ってる。そこも大事。
インスタントじゃないココアをちゃんと作ることが出来る。大事!
ケイティの危機を第六感で察知できる。素晴らしい!
寝起きのくたびれた感じのほうがケイティを腰砕けにさせる、たまりませんな!
買い物が苦手だけど仕事に着ているスーツはすごく仕立てがいい(仕事上に必要なのと、私はロッドが原因とみた)そういうところ本当に大事よね、働く男性としてはね。

オーウェンは意図的に内気に育てられた、すっごくシャイな男性で、恥ずかしいとすぐに赤面するけどそれ以外は表情が乏しく口数も多くはないし、ケイティを警戒させたくないばかりにやたらと「友達」を強調する傾向があるけれど、ケイティがディナーを断った時とその翌朝のオーウェン、超可愛くなかった?(誰に問いかけてるともなしに)

シークレットサンタがケイティだと気づいたオーウェンのあれやこれやって想像に難くない。ケイティのクッキーを欲しがるオーウェンも可愛かったなあ。結局あげてないんじゃないか疑惑があるんだけど(描写がない)、頼むから頼むからあげて欲しかった。食べてる姿を知りたかった。そこ説明不足だよ神様あ!

と、萌えポイントはちゃんとおさえているのであった。少なくとも、1巻よりはね。1巻も本を貸してくれとケイティが電話した時のオーウェンの反応が可愛かったなあ。

どう見てもオーウェンはケイティが気に入っているし、お話の都合上くっつかないとおかしいレベルだと思ったら案の定だったので安心して3巻にいけると思ったら大間違いだったのはまた3巻の話。

では3巻につづきます。